ベネディクト・カンバーバッチ主演ドラマ『パレーズ・エンド』を観た。
BBCとアメリカの共同制作らしい(よく知らない)。
1910年代のイギリスを舞台にイギリス上流貴族のクリストファー・ティージェンスとその妻、クリストファーの想い人であるヴァレンタインの三角関係を描く。
恋愛モノというより時代モノ
というと恋愛モノのドラマのように感じるが、実施は当時のイギリス上流貴族の生活、第一次世界大戦の影響など、時代・文化を描くことに力を注いでいる印象があった。
特に、女性のファッションは興味深かった。キャラによって全然違う。主人公の妻シルヴィア、三角関係になるヴァレンタイン、そのほか女性陣などなど、キャラの個性も反映されたようなファッションが見ていて面白かった。個人的にはヴァレンタインのシャツにネクタイ、スカートといった学生のようなスタイルがかわいいと思った。
個性豊かで対比が際立つ人物描写
このドラマは登場人物が個性豊かだ。
- クリストファー:イギリスの上流貴族で統計局勤め。堅物で融通が利かず、それゆえ損ばかりしている。他者を助けるために自分が不利になってもかまわないという優しさを持っている。
- シルヴィア:クリストファーの妻。クリストファーと関係を持ったのと同じ時期に妻子持ちの男性と不倫関係にあり、クリストファーと結婚した後も相変わらず浮気をしていて駆け落ちまでしてしまう。
- ヴァレンタイン:女性参政権運動をしている若い女性。純真でまっすぐな心を持っている。
シルヴィアの人物描写が結構面白かった。不倫やら散財やら好き勝手なことをするシルヴィアだが、あまり幸せそうではなく、いつもつまらなそうな顔をしている。自分が誘惑すれば男は簡単に自分の思い通りになるけれど、それは彼女にとって退屈なことでもある。そんななかクリストファーは彼女がめちゃくちゃなことをしていても不満を言わず、感情を見せてくれない。そんなクリストファーは彼女にとって苛立ちの種であるのと同時に、特別な存在なんだと思う。
この、「自分の思い通りにならないのがむかつく、だけどそれゆえに特別に感じてしまう」というところがなんか好きだった。
簡単に言ってしまえばかまってちゃんなのかもしれないけど、人間臭くておもしろかった。
また、このドラマは登場人物の対比がおもしろい。
上記三角関係になるので、女性のシルヴィアとヴァレンタインの対比はわかりやすいと思う。不倫や散財をして好き勝手に生きている(ように見える)シルヴィアと、純真で自分の信念を貫くヴァレンタイン。
けれども、個人的には、クリストファーと友人マクマスターの対比もけっこうおもしろかった。
クリストファーはものすごく生真面目で、曲がったことができない。統計局で、政治的主張を支えるために統計の解釈を捻じ曲げられそうになったのが我慢できず、辞職を申し出るほど。また、本当に好きになったヴァレンタインとの関係も一向に進展しない。多分、最初に会ってから、最終話で一緒にいられるようになるまでに6年ぐらいかかっている。
一方のマクマスターは欲に忠実で世渡り上手だ。夫がいるイーディスとあっという間に不倫関係になって妊娠させたり、勲章受章者など力のある人にすり寄ったり、クリストファーの手柄を自分のものにして勲章をもらったり…。
どこまでも自分の欲を出せないクリストファーと欲に忠実なマクマスター。
対比でクリストファーの愚直さが際立つため、マクマスターはおもしろいキャラだと思った。
ハッピーになり切れないラスト
なかなか進まなかったクリストファーとヴァレンタインの関係だが、最終的には2人は結ばれる。とはいっても、あくまでクリストファーは離婚せず、ヴァレンタインは愛人となるため、ハッピーエンドと言い切れない微妙な気持ちになった。
ラストで印象的だったのは、軍人仲間が家を訪ねてきたときに、クリストファーが暖炉に薪をくべるシーン。
薪といっても、ただの木ではない。クリストファーのグロービーの実家には200年以上前から大樹があり、昔から男女がその木の下で結婚を誓ったという。クリストファーが戦地にいる間にシルヴィアが大樹を切り倒してしまい、木の一部をクリストファーは持って帰ってきたのだ。
そんな大事な木をクリストファーが暖炉に放り投げてしまった。「古きを敬う」と言っていたクリストファーが。
クリストファーがこれまでの生き方を捨てた・あきらめたように思えて、見ていてとても悲しくなった。
といってもこの「木を暖炉に放り込む」シーンが何を意味しているのかははっきりわからなかった。木=クリストファーの信念・こだわり・生き方、みたいなものだとすると、「クリストファーはそれらを捨てた」という解釈になるはず。けれどもクリストファーは「離婚はしない」とはっきり言っているので、解釈がちょっと矛盾するような気もする。
全然感想がまとまらないがまとめに入る
ストーリー面/映像面で評価を分けるとすると、ストーリー3点、映像5点といった感じ(5点満点)
ストーリー的には、全5話かけて、超プラトニックに男女がくっつくかくっつかないかの話を延々とやっているので、恋愛モノとしてみるには間延び感が気になる。
当時の風俗、戦争の中で人々がどう生きたのか、みたいな視点では楽しめる。
映像的には、イギリスの田園風景、街並みや当時のファッション、戦地など、様々な要素で見ごたえがあった。